官報公告から電子公告への変更手続き|株主総会から登記まで完全ガイド
「官報公告の費用が高いから電子公告に切り替えたい」と考えている経営者の方へ。 この記事では、既存会社が官報公告から電子公告へ変更する際の具体的な手続きを、 株主総会の開催から登記申請まで、ステップバイステップで詳しく解説します。
変更手続きの全体像
官報公告から電子公告への変更は、定款変更を伴うため、以下の手続きが必要です:
📋 変更手続きの5ステップ
- ステップ1:株主総会の開催準備(招集通知の発送)
- ステップ2:株主総会での定款変更決議
- ステップ3:公告サイトの開設・URL取得
- ステップ4:法務局への変更登記申請
- ステップ5:登記完了後の確認・運用開始
所要期間と費用の目安
📅 期間
株主総会開催から登記完了まで2〜4週間程度
💰 費用
登録免許税3万円+司法書士報酬3〜5万円
(自分で申請すれば3万円のみ)
変更に必要な要件
株主総会の決議要件
公告方法の変更は定款変更に該当するため、株主総会の普通決議が必要です。
📊 普通決議の要件
- 定足数:議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で緩和可能)
- 決議要件:出席した株主の議決権の過半数の賛成
- 招集通知:株主総会の2週間前までに発送(取締役会設置会社の場合)
一人会社・オーナー企業の場合
株主が1名または少数の同族会社の場合でも、形式的に株主総会を開催し、 議事録を作成する必要があります。
💡 実務のポイント:株主が1名の場合、「株主総会議事録」または「株主の決定書」を作成します。 招集手続きは不要ですが、議事録の作成は必須です。
ステップ1:株主総会の開催準備
1-1. 株主総会の招集決定
取締役会設置会社の場合、取締役会で株主総会の招集を決定します。 取締役会非設置会社の場合、代表取締役が招集を決定します。
1-2. 招集通知の作成・発送
株主総会の2週間前(公開会社以外は1週間前)までに、全株主に招集通知を発送します。
📝 招集通知の記載例
1-3. 株主が1名の場合の簡略化
株主が1名のみの会社では、招集通知の発送は不要です。 ただし、株主総会議事録(または株主の決定書)の作成は必須です。
ステップ2:株主総会での決議
2-1. 株主総会の開催
招集通知に記載した日時・場所で株主総会を開催し、定款変更議案を審議・決議します。
2-2. 株主総会議事録の作成
決議後、速やかに株主総会議事録を作成します。この議事録は登記申請に必要です。
📝 株主総会議事録の記載例
⚠️ 重要な注意点
- • 議事録には議長と出席取締役の実印での押印が必要
- • 株主が1名の場合は「株主の決定書」形式でもOK
- • 議事録は本店に10年間保存する義務があります
ステップ3:公告サイトの準備
登記申請の前に、電子公告を掲載するウェブサイトを準備し、URLを確定させる必要があります。
選択肢1:自社サイトで公告ページを作る
✅ メリット
- • 外部サービスの利用料がかからない
- • 自社ドメインで運用できる
❌ デメリット
- • サーバー管理・SSL証明書の維持が必要
- • 24時間365日の稼働保証が必要
- • 調査証明書発行の仕組みを自作する必要
- • 法的要件を満たすページ構成の知識が必要
選択肢2:電子公告専門サービスを利用
✅ メリット
- • サーバー管理不要で即座に利用開始
- • 法的要件を自動で満たす
- • 24時間365日の稼働保証
- • 調査証明書の自動発行
- • 年間2,480円〜と低コスト
❌ デメリット
- • 年間利用料が発生する(官報に比べれば95%削減)
💡 実務的な推奨
多くの企業が電子公告専門サービスを選択しています。理由:
- • 自社でサーバー管理するコスト(SSL証明書代、保守費用)より安い
- • 法務局対応のURL形式で即座に取得できる
- • 障害リスクを専門業者に委託できる
URLの確定
登記申請書に記載するURLを確定させます:
【自社サイトの例】
https://www.yourcompany.co.jp/koukoku/
【電子公告ネットの例】
https://official-koukoku.jp/c/あなたの会社名/
重要:登記申請前に、このURLで公告ページが実際に閲覧できる状態にしておく必要があります。
ステップ4:登記申請
4-1. 必要書類の準備
法務局に提出する書類を準備します:
📄 提出書類一覧
- ① 変更登記申請書
公告方法変更の登記申請書 - ② 株主総会議事録
定款変更を決議した株主総会の議事録(実印押印) - ③ 株主リスト
議決権上位株主または全株主のリスト - ④ 定款
変更後の定款(原本証明付き) - ⑤ 印鑑証明書
議事録に押印した取締役の印鑑証明書(3ヶ月以内) - ⑥ 委任状
司法書士に依頼する場合のみ
4-2. 登記申請書の作成
📝 登記申請書の記載例
4-3. 登録免許税の納付
登録免許税3万円(資本金1億円以下の場合)を収入印紙で納付します。
💡 収入印紙の購入方法
- • 郵便局で購入(3万円分)
- • 登記申請書に貼付(消印は不要)
- • オンライン申請の場合は電子納付も可能
4-4. 法務局への提出
本店所在地を管轄する法務局に、準備した書類一式を提出します。
方法1:窓口持参
管轄法務局の商業登記窓口に直接持参。その場で形式チェックを受けられます。
方法2:郵送
書留郵便で管轄法務局に送付。「商業登記申請書在中」と記載。
方法3:オンライン申請
登記・供託オンライン申請システムを利用。添付書類は別途郵送。
ステップ5:変更後の対応
5-1. 登記完了の確認
申請から1〜2週間後、登記が完了します。 法務局から連絡はないので、自分で確認する必要があります。
✅ 確認方法
- • 窓口申請の場合:受領した「登記完了予定日」を確認
- • オンライン申請の場合:システムで処理状況を確認
- • 共通:登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して内容確認
5-2. 登記簿謄本の取得
変更登記が完了したら、登記簿謄本を取得して以下を確認します:
- 「公告をする方法」欄が「電子公告」に変更されているか
- URLが正しく記載されているか
- 障害時の官報掲載条項が記載されているか
5-3. 関係先への通知
必要に応じて、取引先や金融機関に公告方法変更を通知します:
📧 通知が必要な先
- • 取引銀行:新しい登記簿謄本の提出を求められる場合あり
- • 主要取引先:契約書に公告方法の記載がある場合は通知
- • 顧問税理士・会計士:財務諸表公開時に参照するため
5-4. 実際の公告掲載開始
登記完了後、決算公告などを実際に電子公告として掲載できるようになります。
費用と期間の目安
費用の内訳
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 30,000円 | 資本金1億円以下の場合 |
| 司法書士報酬 | 30,000〜50,000円 | 依頼する場合のみ |
| 印鑑証明書 | 数百円 | 取締役分 |
| 登記簿謄本 | 600円 | 確認用(任意) |
| 合計 | 30,000円〜 (司法書士依頼時は6〜8万円) |
💰 費用対効果の試算
官報公告費用(決算公告1回):約6万円/年
電子公告(電子公告ネット):2,480円/年
年間削減額:約57,520円
変更手続き費用3万円は、約6ヶ月で回収できます。
期間の目安
株主総会招集〜開催
2週間(公開会社以外は1週間)
公告サイト準備
即日〜数日(サービス利用の場合は即日)
書類準備〜登記申請
3〜5日
登記完了
申請から1〜2週間
合計:3〜5週間程度
※ 株主が1名の場合は招集期間が不要なため、2〜3週間程度に短縮できます
よくある失敗例と注意点
❌ 失敗例1:URLが実在しない状態で登記申請
登記申請書に記載したURLで、実際に公告サイトが閲覧できない状態で申請してしまい、 法務局から補正(修正指示)を受けるケース。
✅ 対策:登記申請前に必ずURLの動作確認を行う
❌ 失敗例2:株主総会招集期間が不足
取締役会設置会社なのに、株主総会の1週間前に招集通知を発送してしまい、 決議が無効になるケース。
✅ 対策:取締役会設置会社は2週間前、非設置会社は1週間前を厳守
❌ 失敗例3:議事録に認印を押印
株主総会議事録に取締役の認印を押印してしまい、印鑑証明書と照合できず、 補正を受けるケース。
✅ 対策:議事録には必ず実印を押印し、印鑑証明書を添付
❌ 失敗例4:定款と登記申請書の記載が不一致
定款変更では「電子公告により行う」と決議したのに、 登記申請書に「官報に掲載する」と記載してしまうケース。
✅ 対策:定款と登記申請書の記載内容を申請前に再確認
❌ 失敗例5:変更登記を忘れて公告を掲載
定款変更の決議だけして登記申請を忘れ、電子公告で決算公告を掲載してしまうケース。 登記簿上は依然として官報公告のため、公告義務違反になります。
✅ 対策:必ず変更登記を完了させてから電子公告を開始
まとめ:スムーズに切り替えるために
✅ 成功のための5つのポイント
- 1. 招集期間を守る
取締役会設置会社は2週間前、非設置会社は1週間前に招集通知を発送 - 2. 議事録は実印で押印
株主総会議事録には取締役の実印を押印し、印鑑証明書を添付 - 3. 公告サイトを先に開設
登記申請前に、記載するURLで公告サイトが閲覧できる状態にする - 4. 専門サービスの活用を検討
自社でサーバー管理するより、年間2,480円〜の専門サービスが確実で安価 - 5. 登記完了を必ず確認
登記簿謄本を取得して、公告方法とURLが正しく記載されているか確認
電子公告ネットなら、変更手続きもスムーズ
登記申請前にすぐ使えるURLを発行。法務局対応の公告サイトを即座に開設できます。
- ✅ 登記用URLを即日発行
- ✅ 法的要件を自動で満たす
- ✅ 24時間365日稼働保証
- ✅ 年間2,480円〜で95%コスト削減
- ✅ 調査証明書の自動発行対応

監修:竹中行政書士
会社法務・電子公告の専門家
多くの企業の公告方法変更をサポートしてきた経験から、 実務で確実に通る手続きの流れをご紹介しました。 株主総会の招集から登記申請まで、各段階のポイントを押さえれば、 司法書士に依頼しなくても自分で変更手続きを進められます。
免責事項:本記事の情報は2025年1月時点の法令・実務に基づいています。 実際の登記申請では、管轄の法務局や専門家(司法書士・行政書士)にご確認ください。