電子公告の定款記載例【登記で通る正しい書き方】

竹中
記事執筆者竹中行政書士事務所
地域に寄り添う行政書士として、会社設立や許認可申請など、暮らしとビジネスを支える法務サービスを提供しています。
こんにちは、行政書士の竹中です。
「電子公告を定款に記載したいけど、正しい書き方がわからない」「法務局で受理される条文例を知りたい」 そんな疑問をお持ちの方へ。この記事では、会社設立や定款変更の際に使える、法務局で確実に受理される定款記載例を詳しく解説します。
1. 電子公告とは?定款に記載する理由
電子公告とは、会社法で定められた公告方法の一つで、自社のウェブサイトに公告を掲載する方法です。 従来の官報公告や新聞公告と比べて費用が大幅に安く、多くの企業が採用しています。
定款に公告方法を記載する理由
会社法では、株式会社の定款に「公告方法」を必ず記載しなければならないと定めています(会社法第911条第3項第14号)。 公告方法は登記事項でもあり、登記簿謄本にも記載されます。
定款に記載する公告方法は以下の3つから選べます:
- •官報公告:官報に掲載する方法(約6万円/回)
- •新聞公告:全国紙や地方紙に掲載する方法(約8万円/回)
- •電子公告:自社ウェブサイトに掲載する方法(年間2,480円〜)
多くの企業が、コスト削減のために電子公告を選択しています。 実際、上場企業の65%が電子公告を採用しています。
2. 【標準形】電子公告の定款記載例(そのまま使える)
最も一般的で、法務局で確実に受理される標準的な記載例は以下の通りです:
✅ 標準テンプレート(そのまま使えます)
(公告の方法) 第○条 当会社の公告は、電子公告により行う。 ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合は、官報に掲載して行う。
条文のポイント解説
① 条文番号「第○条」
条文番号は定款全体の構成によって変わります。多くの定款では第5条〜第8条あたりに記載されます。 既存の定款がある場合は、条文番号の順序を確認してください。
② 「電子公告により行う」
この文言が電子公告を選択する核心部分です。シンプルですが、これだけで法的に有効です。
③ 「ただし書き」(障害時の官報掲載)
サーバー障害などで電子公告ができない場合の代替手段を定めています。 法律上は必須ではありませんが、実務上は記載を強く推奨します(詳しくは後述)。
3. 【応用形】ケース別の記載例
ケース1:電子公告のみ(障害時条項なし)
(公告の方法) 第○条 当会社の公告は、電子公告により行う。
💡 特徴:シンプルですが、障害時の対応が不明確なため、実務上はあまり推奨されません。
ケース2:決算公告のみ電子公告(その他は官報)
(公告の方法) 第○条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。 ただし、会社法第440条第1項の決算公告については、電子公告により行う。
💡 特徴:決算公告だけ電子公告、合併などの重要公告は官報という使い分け。 大企業や上場企業でよく見られるパターンです。
ケース3:新聞公告を代替手段にする場合
(公告の方法) 第○条 当会社の公告は、電子公告により行う。 ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合は、日本経済新聞に掲載して行う。
💡 特徴:代替手段を「官報」ではなく「特定の新聞」にした例。あまり一般的ではありません。
4. URLの扱いと注意点
定款にURLを記載する必要はありません
電子公告を選択する場合、多くの方が「公告を掲載するURLを定款に書かなきゃいけないの?」と疑問に思いますが、定款にURLを記載する必要はありません。
📌 URLを記載する場所
- ✅登記申請書:会社設立や変更登記の申請書に「公告をする方法」としてURLを記載します
- ✅登記簿謄本:登記が完了すると、登記簿謄本の「公告をする方法」欄にURLが記載されます
- ❌定款:定款には「電子公告により行う」とだけ記載すればOK
URLを変更する場合はどうする?
公告用のURLを変更する場合は、変更登記が必要です:
- 1. 新しいURLで公告サイトを開設
- 2. 変更登記申請書を法務局に提出
- 3. 登記簿謄本に新しいURLが反映される
この時、定款は変更する必要がありません。定款には「電子公告により行う」としか書いていないので、URLが変わっても定款変更は不要です。
💡 実務のヒント
電子公告ネットのような専門サービスを利用すれば、URLはhttps://official-koukoku.jp/c/あなたの会社名/のような形で提供されます。このURLを登記すれば、自社でサーバーを管理する必要がありません。
5. 障害時条項(官報併用)は必要か?
「ただし書き」は必須ではないが、強く推奨
標準テンプレートに含まれている「ただし、事故その他やむを得ない事由によって〜官報に掲載して行う」という部分は、 法律上は必須ではありません。
しかし、実務上は記載することを強く推奨します。
なぜ障害時条項が必要なのか?
⚠️ リスク1:サーバー障害
サーバー障害やシステムトラブルで公告サイトが閲覧できなくなった場合、 公告義務を果たせず法的リスクが発生します。
⚠️ リスク2:公告の無効化
合併や減資などの重要な公告が法定期間中に閲覧できない場合、 公告自体が無効になるリスクがあります。
⚠️ リスク3:過料の対象
公告義務違反は100万円以下の過料の対象になります(会社法第976条)。
障害時条項を定款に記載しておけば、万が一の時に官報公告に切り替えることで、 これらのリスクを回避できます。
✅ 実務的な結論
多くの司法書士・行政書士は、障害時条項の記載を推奨しています。
法務局でも、この条項があることで「リスク管理ができている会社」と評価されます。
6. 登記時のチェックポイント
定款に電子公告を記載した後、登記申請する際の注意点をまとめました。
会社設立時の登記申請
📝 登記申請書の記載例
公告をする方法 電子公告により行う。ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合は、官報に掲載して行う。 公告をする方法についての定款の定めに従い、公告をすることができない場合の公告方法 官報に掲載する方法 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの https://official-koukoku.jp/c/あなたの会社名/
※ URLは実際に開設した公告サイトのアドレスを記載してください
既存会社の定款変更による登記
既に設立済みの会社が、官報公告から電子公告に切り替える場合:
- 1.株主総会で定款変更を決議
公告方法の変更には株主総会の普通決議が必要 - 2.公告サイトを開設
自社サイトまたは電子公告サービスを利用 - 3.変更登記申請
株主総会議事録、定款、登記申請書を法務局に提出 - 4.登記完了
登記簿謄本に新しい公告方法とURLが記載される
💰 登記費用(参考)
- •登録免許税:3万円(資本金1億円以下の場合)
- •司法書士報酬:3〜5万円程度(依頼する場合)
※ 自分で登記申請すれば、登録免許税の3万円だけで済みます
法務局でよく指摘される注意点
❌ NG例1:URLが実在しない
登記申請時に記載したURLで、実際に公告サイトが閲覧できる状態になっていないと、 法務局から補正(修正指示)が入ります。
❌ NG例2:定款と登記申請書の記載が一致しない
定款に「電子公告により行う」と書いているのに、登記申請書には「官報に掲載する」と書いてしまうケース。 必ず一致させてください。
❌ NG例3:公告サイトの要件を満たしていない
電子公告は「不特定多数が常時閲覧できる」ことが要件です。 会員限定サイトや、検索エンジンからアクセスできないサイトはNGです。
7. 電子公告サービスを使う場合の注意点
多くの企業が、電子公告の掲載を専門サービスに委託しています。 その理由と、外部委託する場合の注意点を解説します。
なぜ専門サービスを使うのか?
✅ メリット1:サーバー管理不要
自社でサーバーを用意・管理する必要がなく、専門業者が24時間365日の安定稼働を保証します。
✅ メリット2:法的要件を満たす
会社法が求める「常時閲覧可能」「調査証明書の発行」などの要件を自動で満たせます。
✅ メリット3:登記実務に対応
法務局が求める形式でURLを提供してくれるので、登記申請がスムーズです。
✅ メリット4:コストが安い
自社でSSL証明書やサーバーを用意するよりも、年間2,480円〜の専門サービスの方が圧倒的に安価です。
専門サービスを使っても定款記載は同じ
電子公告を外部サービスに委託しても、定款の記載内容は変わりません:
(公告の方法) 第○条 当会社の公告は、電子公告により行う。 ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合は、官報に掲載して行う。
この記載で、自社サイトでも外部委託サービスでも、どちらでもOKです。
💡 電子公告ネットの場合
電子公告ネットを利用すれば:
- ✅登記用のURL(
https://official-koukoku.jp/c/あなたの会社名/)を即座に取得 - ✅法務局が求める要件を自動で満たす
- ✅登記freee・行政書士からも利用実績あり
- ✅年間2,480円〜で利用可能
まとめ
電子公告の定款記載について、重要なポイントをまとめます:
押さえるべき5つのポイント
- ✓1. 標準テンプレートを使う
「電子公告により行う。ただし、事故その他やむを得ない事由〜官報に掲載」が最も確実 - ✓2. 定款にURLは書かない
URLは登記申請書と登記簿謄本に記載。定款には「電子公告により行う」だけでOK - ✓3. 障害時条項を必ず入れる
法律上は任意だが、実務上は強く推奨。リスク管理の観点から必須 - ✓4. 公告サイトを先に開設
登記申請前に、記載するURLで公告サイトが閲覧できる状態にしておく - ✓5. 専門サービスの活用を検討
自社でサーバー管理するより、年間2,480円〜の専門サービスが確実で安価
電子公告の定款記載は、正しいテンプレートを使えば難しくありません。 この記事の標準テンプレートをそのまま使っていただければ、法務局で確実に受理されます。
会社設立や定款変更でお困りの際は、ぜひ参考にしてください。
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